
ピストンリングのトップリングが真ん中から真っ二つに折れてしまったためシリンダ内部も一部傷がついてしまい結局腰上がすべて要交換となってしまいました。
部品代も19000円と高額なため悩みましたが、30ccの大排気量のこのマシンはナイロンコード専用機としてとても重宝していたし、この機体があるため2台目は22ccで軽量マシンを購入していました。
つまりこの機体がなくなってしまうとナイロンコードが使える刈払い機がなくなってしまう。
刈払い機の寿命は?

オイル管理が良い場合は長時間使用してもピストンの焼き付きやマシントラブルも少なく安心して使えます。しかし、機械なのでどこかが摩耗しますが、最も先にダメージを受けるのが燃焼圧力をシールするピストンリングです。一般家庭の人や兼業農家の人が少し使うというレベルではオイルがいい場合は何十年も問題なく使用できる場合があります。
しかし、プロ農家や草刈りを本業にするような場合は毎日6~8時間何か月も使っていると、使い方によっては3~5年程度でパワーダウンを体感できます。(知り合いのプロ農家はナイロンコード使用で使う時は常にアクセル全開フルパワーで使うと5年たつと夏場などパワーが落ちたと体感するから買い替えるとのこと。実はこのマシンのそのプロ農家からパワーダウンしたマシンを安価で購入したのです)
また、ピストンリングは張力を持っておりシリンダに突っ張るのですが上記の写真のようにほとんど張力がなくなってしまう場合もあります。
修理開始(養生とピストンピンクリップ外し)

シリンダを外したためクランクケースにゴミが入ることを防止するためにウエスを突っ込みます。
この時事前にシリンダーのパッキン部をきれいに掃除しておくことをお勧めします。ゴミが残っていると作業に夢中になった時にポロリと落ちてしまいます。
まずはピストンピンをい止めているクリップの両側をラジペンで取り外します。
ピストンピン抜き取り

ピストンピンは手で押したくらいでは抜けないので専用の工具が売っているのですが手元にないのでとりあえずスライド式のギアプーラを使って外します。今回はピストンピンのほかにニードルベアリングやスラストを受ける部品も交換するためあまり気にせずやってますが、ベアリングなどを再利用す場合は押し出すロッド部分でベアリングを傷めないように注意する必要があります。
プーラで押してねじ部にかかると直径が大きくなってしまうため、その辺に転がっていた六角穴付きボルトなどを駆使して抜き取りました。

ピストンピンを外してチェックするとベアリングにはカーボンがたまったりしていますがピンに傷もなく状態は良好です。ピストンピンが入るボスと摺動する部品(スラストを受ける)は少し摩耗してる?
ピストン交換


2stオイルを塗ったベアリングとスラスト受け(?名前がわからん)をはめてピストンをかぶせます。
ピストンには向きがあるためピストン頂部の矢印(三角マーク)が排気側に来るように注意します。ピストンピンクリップを奥側だけ取り付けて油をたっぷり塗ったピストンピンをピストンに少し差し込みます。ベアリングを通過するまでは手でするすると入るため押し込みます。
写真を撮り忘れましたが、最後は少し締りばめになっているのか手では入らないためピストンに傷がつかないようように養生してまたギアプーラでピストンピンを押し込みました。

ピストンピンクリップがはまる溝がはっきり見えるまでピンを押し込んでクリップを止めます。クリップは張力が強いため外れた時に飛んで行って目など当たらないように注意しましょう。
ピストンリングはめ、シリンダー組付け

ピストンリングをはめますが、リングには向きがあること、場合によってはトップリングとセカンドリングが異なる場合があること、過剰に広げると折れることに注意します。
エンジンによってはピストンリングの周り止めがないものもある場合がありますが今回は周り止めピンがあるので位置と向きをチェックします。向きを間違えるとピンを交わす段差が合わずリングが広がったままでシリンダが入りません。
刈払い機くらいならあまり心配はありませんが、エンジンによってはピストンリングはとても折れやすく、ピストンにはめるときに過剰に広げると簡単にぽっきっと折れてしまいます。よって過剰に広げないようにピストンリングは少し広げて溝までもっていきますが、溝と平行をたもつほど少ない広げ量ではまってくれます。
昔若造だったころ、直径30センチもある船舶用のエンジンのピストンリングをはめるときに溝と斜めになっていることに気が付かず過剰に広げたらピストンリング表面が剥離してしまってだめにしたことがあります。
新品のピストンリングは張力もあっていい感じです。
シリンダ挿入

ピストンリング周辺やピストン、シリンダに2STオイルを薄く塗ります。
ピストンリングを絞りながらシリンダを入れるためピストンリング絞りを使います。(なくてもできますがあると圧倒的に楽です。)
挿入前にピストンの向きピストンリング周り止め位置、クリップの付け忘れなどチェックしてからシリンダ入れます。
シリンダ合わせ面のチェックしてパッキンをセットしてシリンダを挿入します。

シリンダを押そうとするとクランクが回ってピストンが下がってしまうので手でクランクを回してTDCまでピストンが行くようにします。
T型レンチでシリンダをしっかり締め付けて組付けて、手でクランクを回して異常がないかチェックして完了です。
ボルトの手入れ


シリンダ取り付けボルトはかじり対策のためモリブデングリスを塗りました。
ここから先は順番に組み付けていくだけなのですが、分解してから半年以上経つと組付け順序を忘れて結構手間取りました。
部品組付け時にボルトにアルミ部材が凝着して入りにくい場所が何か所かありましたので必要に応じて外したボルトにダイスを通してきれいにします。


ボルトのねじ部は通常の箇所には写真左側のモリブデングリス。マフラーなど高温部分には銅が混ざっている耐熱グリスを塗りました。
新品のシリンダーに部品を組み付けていると何か所かねじ穴がきついところがありました。ゆるみ止めを兼ねてるのか?と思いましたがやはり気持ちが悪いのでタップを通してねじ部をさらいました。
きついところがあるのは普通なのでしょうか・・・・。
組み立て完了、ドキドキの始動から慣らし運転

ずべて組付けが完了していよいよ始動です。
正しく組付けた自信があるので始動することに疑いはないのですがいつもドキドキしてしまいます。
火を入れる前に混合気をシリンダやクランク室に入れて潤滑させるためチョークを引いてリコイルを引きます。プラグを外してかぶってないことを確認してプラグを外したままさらにリコイルを引いて過剰に入った混合気を出します。
改めてプラグをしっかりと組み付けてスイッチオン
ドキドキしながらリコイルを引くと
ぶるんっ!と言いながらしっかり始動してくれましたー。よかったー。
間違いなく指導するとわかっていても緊張します。
アイドルのまま少しおいてゆっくり回転を上げて慣らし運転を完了とします。本格的な負荷をかけた運転はまた今度。
今年もたくさん活躍してくれると思います。
追記(ピストンリング摩耗)
分解した部品を改めて見るとピストンリングがびっくりするくらい摩耗していました。
張力の低下のほかにピストンリングの摩耗がこれほど発生するのかと驚きでした。
オイル管理が良ければかじることもなくとてもよくしごとをしてくれます。圧縮のチェックやエアフィルターの掃除など早め早めの対処をすれば今回のような重症を回避できると思われます。


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